叩き割ってしまってはどうだろう、と、人の子は思った。座って向かった先にある、継ぎ跡だらけで汚ならしい、無計画にでこぼことした、見るも哀れで不格好な器。どれほど必死に隠そうとしても、好奇心旺盛な他の人の子たちが探し当てては、無様だ、滑稽だ、と笑い立てる、呪わしい器。だったら、もう、端から存在しなければ良いではないか。叩き割ってしまって、みんなは最早馬鹿にする宛てが無くなってしまって、そうしたら自分は丸ごと綺麗なのと、いや綺麗なのとは欲張らずとも、せめて人並みに整った申し分ないものと、取り替えてもらったほうが良いではないか。そのほうが早いし、こんな苦渋を舐め続けることもないし、無為に惨めに何十年も費やすより合理的で、心が軽くて、良いではないか。こんな出来損ない、大事にして取り繕って、どうにかましな形になりはしないかと、期待して、苦心して、結局は何も変わらず、いや一層無様になっていくのみならば、いっそ人目に触れるものなど跡形も何も無くなればいい。
ーーーそう思い至ってから、その煌めかしい、心浮き立つような夢想に惹かれながら、どれだけの時が経ったことか。まだ人の子は、世の優れる者たちに恩情をかけられ、また自ら始末をつけることもなく、割られず割らず、怯え逃げ戻り、なおもこの世に居座った。ひと思いに、なくなれば良いものを。ずるずると未練がましく、まだ生きながらに生まれ変わる希望はあるはずと、身の程もわきまえず、恥知らずにもすがりついて。不出来な器を呪いながら、駄弱な心を呪いながら、それでいて、幼稚にも、己の魂だけは誰より何より崇高であると頑なに信じて。
ああ、お前など死んでしまえば良いものを。
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